研究概要 |
1.CD34陽性造血幹細胞の選択的分離法の確立 免疫ビーズを用いた分離システムであるIsolex systemにより、骨髄造血幹細胞あるいは末梢血幹細胞を純化する方法を確立した。CD34陽性細胞の50〜60%の回収率と95%以上の純度が確保された。CD34陽性細胞の大量増幅法の検討を開始し,造血前駆細胞までの増殖は可能であったが,自己複性能を保持した造血幹細胞の増幅はまだ達成されていない。 2.CD34細胞による移植法 20例の予後絶対不良の難治性疾患患者において、HLAが2〜3抗原異なる血縁者をドナーとしてCD34陽性細胞による造血幹細胞移植を施行した。いずれも血縁者あるいは非血縁者間にHLA適合ドナーを持たず、本人もしくは両親から希望のあった症例で倫理委員会の承認を得た症例である。 a.生着 18例において生着がえられた。不生着の2例中1例で別のドナーからの再移植を行い、生着がえられた。生着に必要なCD34陽性細胞は2x10^6/kg前後ではないかと推測された。 b.GVH病 移植細胞中のT細胞は10^4(〜10^5)/kgであり、3〜4logのT細胞除去が達成された。生着がえられた19例(1例は再移植後)においてIII度以上の重症GVH病はなく、ほとんどが0〜I度であり、2〜3抗原HLA不適合移植としてはほぼ完全なGVH病予防であったと考えられる。3カ月以上の長期生存者において慢性GVH病の合併は認められていない。 c.白血病の再発 適応となった症例が進行白血病であったため、またGVH病の合併がほとんどなかったため,白血病の再発が認められた。そのため,今後の課題の1つとして,移植後のドナーリンパ球輸注(DLT)をどのように行うかがあげられる。 d.感染症の合併 多くの症例でサイトメガロウイルス感染を合併し,2例においてEBウイルスによる致命的リンパ腫を合併した。T細胞回復遅延がその原因と考えられ,その予防あるいは治療としてDLTもしくはウイルス特異的キラーT細胞の輸注が必要であると考えられた。
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