わが国の下痢症ウイルス(ロタ、アデノ、小型球形など)の流行疫学に関する研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07457188
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 牛島 廣治 東京大学, 医学部(医), 教授 (10091068)
• 研究分担者: 西尾 治 国立公衆衛生院, 衛生微生物学部, 室長 (40270631)
• キーワード: 下痢症ウイルス / ロタウイルス / 小型球形ウイルス / アデノウイルス / アストロウイルス / ノ-ウォークイウルス / 分子疫学

研究概要

アストロウイルスは従来電子顕微鏡での観察に止まっていたが、われわれを含めて1-7型の代表的なものについて遺伝子配列が決定されるようになった。これらの遺伝子配列をもとに今年度、1-7型の特異プライマーを設定することができた。すでに血清型が抗体を用いて決められている培養アストロウイルスに対してRT-PCRを用いた血清型を行ったところほぼ一致した結果を得た。4型についてはRT-PCRで検出可能な株と出来ない株があった。現在RT-PCR産物を遺伝子解析中である。舞鶴の1991-1994の非ロタウイルスの160便の約7%がアデノウイルスであった。冬にやや多いものの四季を通じて見いだされた。生後7カ月以降で陽性がみられた。
ノ-ウォーク関連ウイルスに関してJiangらが開発したモノクローナル抗体およびプライマーをもちいたRT-PCRで検査した。舞鶴の1991-1993の160便で約5%に見いだした。やや冬期のロタウイルスよりも早い時期により多くみいだされた。RT-PCR産物の遺伝子解析を行い、ノ-ウオ-ク亜群よりスノーマウンテン亜群の方が多かった。
今年度も昨年度に続き、札幌、東京、舞鶴、香川、久留米から下痢便を頂き、ウイルス学的検査の途中である。昨年10-11月にかけて軽症の下痢が流行した。ロタウイルスはほとんど見いだされなかった。アストロウイルス、ノ-ウォークウイルスもみいだされたがそれぞれ10%位で特に多いとの印象はなかった。
ロタウイルスの1、2型のVP7遺伝子(1062bp)の解析による分子疫学に続き、3、4、型の解析をおこなった。3型は国内の12株で行い、株間の差が1、2型より大きかった。国外の株と比較を現在行っている。

研究成果

• [文献書誌] Grinde & Ushijima: "Sensitive detection of group A rotaviruses by immunomognetic beads and RT-PCR" J Virol Method. 55. 327-338 (1995)
• [文献書誌] Yasui & Ushijima: "Passive protection against rotavirus induced diarrhea of pups born to and nursed by dam fed Bifidobacterium breve YIT4064" J Infect. Dis. 172. 403-409 (1995)
• [文献書誌] Saito & Ushijima: "Detection of astroviruses from stool samples in Japan using reverse transcription and PCR" Microbiology & Immunology. 39. 825-828 (1995)
• [文献書誌] Wen & Ushijima: "Genetic Variation in VP7 gene of human rotavirus serotype 2 isolated in Japan, China and Pakistan" Microbiology & Immunology. 39. 911-915 (1995)
• [文献書誌] Ushijima et al.: "Characterization of VP4 and VP7 of a murine rotavirus isolated in Japan" Jpn. J. Med. Sci. Biol. 48. 237-247 (1995)
• [文献書誌] Nakayama & Ushijima: "Detection and sequencing of Norwalk-like viruses from stool samples in Japan using RT-PCR" Microbiology & Immunology. 1996(in press).
• [文献書誌] 牛島廣治編: "ウイルス性下痢症とその関連疾患" 新興医学出版社(服部秀夫), 158 (1995)