研究概要 |
肝の放射線耐容を解明すべく、耐容との深い関与が予想される肝予備能を、非照射部肝体積及びその代償肥大並びに肝機能(ICG R15値)に関連させて解析した。陽子線による高線量局所照射がなされ、経過追跡CT画像を具備した肝硬変合併肝癌症例26症例を対象とした。しかし、放射線耐容を超えて肝不全をきたした症例がなかったため、外科領域で有用性が確認されている肝切除後肝機能不全発現の予測式を転用して解析した。これは、変数にICG R15値と機能肝体積とを含む重回帰式から、Predictive score(PS)を求めるものである:PS=0.993^*A+1.12^*B+0.999^*C84.6、ここで、Aは肝切除率(切除される肝体積/切除前全肝体積)、BはICG R15値、Cは年齢である。PS値が50以上の場合、肝不全に陥ることが知られている。肝切除率を照射部肝体積率(線量30Gy以上が照射される肝体積/照射前全肝体積)に置き換えてPS値を算出した。全肝照射における耐容線量が30Gyとされているからである。 照射部肝体積率は照射計画用CT画像のDose volume histogram解析により求めた。非照射部肝体積及びその代償肥大については、経過追跡CT画像で濃度変化として認識できる照射部肝体積を計測し、全肝体積から差し引いて求めた。その結果、非照射部肝体積は、照射部肝体積の萎縮に呼応して代償肥大をきたすことが明らかになった。PS値は21例で50未満となり、50以上であった5例においても、非照射部肝体積の代償肥大を勘案すると安全域に低下することから、肝の放射線耐容は、外科療法における安全性に類似して、治療後の肝予備能に大きく依存することが示唆された。以上の研究成果は、第8回欧州癌会議(ECCO,Oct.1995,Paris)で発表し、Int J Radiat Oncol Biol Physに投稿中である。
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