【目的】肝硬変を合併した肝細胞癌の放射線治療において放射線耐容の主要な決定的因子になると推定される肝予備能について究明し、また腫瘍の縮小様式について解析すること。【対象と方法】放射線耐容の研究には26症例の、腫瘍縮小解析には18症例の、一連の経過追跡CT画像を用いた。これらの症例は、病巣部への線量集中性が高い陽子線を用いて照射され、病巣線量はTDF換算で140-186と高線量であった。経過追跡CT画像上で、認識できる部分肝体積(腫瘍体積、照射肝体積、全肝体積)を計測し、非照射肝体積を算出してその代償性肝肥大の程度を求めた。放射線誘発性肝不全のリスクは、元来外科的治療において肝切除後肝不全を予測するのに用いられているprediction score(PS)の概念を、切除肝体積を照射肝体積で代用して、算定した。腫瘍縮小は、腫瘍の一日当たり減少量(DD:cm^3/day)を基に解析した。DDと治療前腫瘍直径(D:cm)との関係を回帰分析で求めた。【結果】肝肥大の程度は、治療計画上の照射肝体積と治療前機能肝体積(全肝体積-腫瘍体積)との比と、正の相関を示した。PSの概念は観察された放射線耐容とよく一致した。腫瘍縮小について指数関数として求めた回帰式は、DD=axD^bで表され、b値は照射後早期(≦6月)では3.0以上、晩期(>6月:6〜33月)では2.0以下になった。【結論】硬変肝の放射線耐容は、外科的治療における概念と同様、非照射肝体積の肝予備能と緊密に関係しており、また非照射肝体積は照射後代償性に肥大することが示された。治療後の腫瘍縮小は、はじめ腫瘍体積に、続いて腫瘍表面積に比例してclearされ、その後は更に緩徐なclearanceを呈した。実質臓器腫瘍の放射線治療後clearanceの機序について、更なる研究が必要である。
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