投与した抗体が、免疫反応により病巣に特異的に集積することを利用して、モノクローナル抗体は癌、炎症、心筋梗塞、血栓などの画像診断のみならず癌、エイズや移植に伴った急性拒絶症反応などの治療にも応用されようとしている。しかしモノクローナル抗体はマウス由来のため投与した患者血中に抗マウス抗体の産生されるが、遺伝子工学により作製したヒト型モノクローナル抗体を用いると抗マウス抗体の産生がなく副作用を軽減できる。 遺伝子工学の手法を用いて白血球と反応する抗体、卵巣癌と反応する抗体を用いて、ヒト型モノクローナル抗体を作製した。画像診断の目的には放射性同位元素(RI);テクネシウム(Tc)-99mが最も優れている。それぞれのヒト型抗体はTc-99mで標識され、血中でも安定していた。本学倫理委員会の許可を得て、まず卵巣癌患者に、次いで骨髄疾患患者で安全性と臨床的有用性を検討した。投与したヒト型抗体は安全で、何ら副作用なく、卵巣癌に集積することが確かめられた。また白血球と反応するヒト型抗体はこれまで17例の患者を対象にテクネシウム-99m標識したヒト型抗体の安全性、臨床的有用性を検討した。投与した白血球と反応するために正常骨髄に集積するのに対し、癌の骨転移部は陰影欠損として描画され、骨転移の診断に有用であった。さらに溶血性貧血、骨髄線維症、骨髄増殖性疾患ではそれぞれ特徴的な骨髄分布を示すことが明らかとなった。いずれの症例でもRI標識キメラ抗体は安全に使用することができた。
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