ポジトロン断層法(PET)を用いた心筋のエネルギー代謝の解析は、近年F-18標識FDGによるブドウ糖代謝に加えてC-11標識パルミチン酸による脂肪酸代謝やC-11標識酢酸による酸素代謝の解析が可能となった。これまで京都大学においてこの手法を用いた基礎的・臨床的検討を行ってきたが、PETのない施設では同種の検討を行うことはできない。そこでこの研究では画像解析システムを導入してPETのない北海道大学においてもPETの画像データを転送することを試みた。本年度には十分なデータを送れる所までは行かなかったが、画像内の数値のデータは容易に北大でも入手できるようになり、今後ハードウェアとソフトウェアを充実させることによって画像の転送ができる見込みが立った。他方一般核医学診療施設で応用できる、I-123標識脂肪酸製剤のBMIPPを用いたSPECTによる臨床的研究を進めた。PETのデータと対比したところ、BMIPPの集積低下した領域では酸素代謝の低下を伴っており、心筋局所の代謝の異常が示唆された。さらには血流分布に比べてBMIPP集積の低下した領域では、PETでは血流に比べてブドウ糖代謝の亢進した虚血心筋を反映することもわかった。このことから一般臨床で利用するBMIPPとT1の併用で、PETの代謝情報にほぼ匹敵する情報の得られることが示唆された。今後BMIPPなどのSPECTのデータとPETでの成績を詳細に対比することで、どの程度新しい一般臨床検査で代謝情報が得られるか、またこのような代謝情報が心筋性状をどの程度把握し、病態評価に役立つかについて検討できる土台ができたといえる。
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