研究概要 |
【目的】放射線治療の抵抗性因子として腫瘍内の低酸素性細胞がある.これをターゲットとした低酸素性細胞増感剤あるいはNicotinamide(NA)とCarbogen(95%O_2,5%CO_2)を併用した放射線治療の臨床試験が進行中である.これらの療法は低酸素性細胞が有意に存在する腫瘍に用いてこそ真の有用性が認められる.そこで我々は腫瘍内酸素濃度測定を目的として,近赤外レーザー光を用いた非侵襲的な腫瘍組織酸素代謝測定装置の導入を認めている.今回は3波長の近赤外光を用いた光CT法について報告する. 【方法】腫瘍:8週令Ba1b/cマウス下腿部に移植したEMT6腫瘍および8週例C3H/Heマウス下腿部に移植したSCCVII腫瘍を用いた.腫瘍体積は約900〜2700mm^3.マウスはウレタン/クロラロースによる麻酔施行後腫瘍に測定装置を取り付けた.測定は(1)Air吸入下,(2)Carbogenガス吸入下,(3)ネンブタール過剰投与による屠殺後の3条件で行った.測定:腫瘍部に12本の光ファイバーを接触させ半導体レーザー,ストリークカメラを用いて時間ゲート法により各点の信号強度を測定し,CT画像を作成し,一方,時間分解曲線(TRS曲線)のfitting処理により吸収係数を求め酸化および還元ヘモグロビン(Hb),全Hb及び酸素飽和度を求めた. 【結語・結論】酸素飽和度は腫瘍体積の増加と共に減少し,腫瘍が比較的小さい内はCarbogen吸入により酸素飽和度は有意に増加するが腫瘍が大きくなるとCarbogenの効果は減少した.腫瘍体積とHb量の変化との関係ではCarbogen吸入によるHb量の変化は腫瘍の大きさに関係なくばらばらであった.さらに腫瘍組織像と対比させて行ったデータ処理結果およびCT画像(酸素飽和度とHb量)から吸気酸素濃度の変化に対応した腫瘍内酸素飽和度の変化を認め,本法の病態生理学的有用性が示唆された.
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