研究概要 |
研究実施計画に記載した方法に則って、長崎市における原爆被爆者の精神健康状態に関する調査を行った。即ち一次調査はGHQ-12を利用し、二次調査には精神医学的構成面接法CIDI、およびGHQ-30などをもとに、そして更に精神科医が三次調査を行った。本年度に対象となった被験者数は、一次調査において4,665人(全対象4,847人中のGHQ-12完了者、性別では男性1,939、女性2,726人)である。 対象者の平均年齢は男性62.61(SD ; 8.41)歳、女性64.15(SD ; 8.58)歳であり、GHQ-12スコアを低得点・中得点・高得点群に分けて高得点者の頻度をみると、男性で8.9%、女性では8.7%と僅かに差があった。ただ60歳以上では逆に女性で高率となっていた。被爆距離とGHQ-12高得点者の頻度の関係をみると、爆心地近くで被爆した者に高得点者が多かった。但し、これは、傾向であって有意の結果ではなく、今後更に解析が必要となろう。このGHQ-12のスコア分布についての解析は未だ本邦で少なく比較対象が困難であるが、われわれ自信が内科外来患者を対象に行った結果と比較するとやや低率である。 二次調査のために抽出されたのは、172人(本来対象となるべき者の内59.7%が同意)で、彼らに所定の調査が施行されたが、CIDIなどの解析は完了していない。そこで三次調査の対象153人に関する結果を紹介する。この対象で、精神科診断が付された者は88人が、うつ病圏の疾患を含む「気分障害」が最も多く、「神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害」がそれに続いた。その頻度は、一般住民と比較したときやや高率であると考えられた。
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