研究課題/領域番号 |
07457210
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
宮川 太平 熊本大学, 医学部, 教授 (90040542)
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研究分担者 |
安川 節子 熊本大学, 医学部, 助手 (80244119)
山下 建昭 熊本大学, 医学部付属病院, 助手 (10230418)
桂木 正一 熊本大学, 医学部付属病院, 講師 (00161092)
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キーワード | アルツハイマー病 / 神経細胞脱落 / 微小血管 / リポクローム / 星状膠細胞 / 電子顕微鏡 / ミクログリア / アポリポ蛋白 |
研究概要 |
アルツハイマー病の主要な病理所見として老人班、神経原線維変化、顆粒空胞変性が良く知られているが、アルツハイマー病で見られる重篤な痴呆の症状の起源を説明するには、これらの病理所見とともに、大脳皮質に見られる広範な神経細胞の変性・脱落がより重要な役割を果たしている可能性がある。 我々は神経細胞の変性・脱落の原因として微小血管の障害性変化に基づく微小循環の障害の可能性を考え、アルツハイマー病脳の皮質で老人班や神経原線維変化の殆ど見られない部分の微小血管を電子顕微鏡的に検索し、次の結果を得た。 内皮細胞内にはリポクロームが蓄積し、胞体は腫大し血管の内腔は狭小化していた。基底膜には肥厚とduplicationが見られ、周囲を取りまく星状膠細胞の血管足にも腫大とリポクロームの蓄積が観察された。このような血管の近傍にある星状膠細胞の胞体にも同様な変化があり、しかも変性所見のある星状膠細胞に接している神経細胞は単純萎縮を呈していた。 以上の所見より、アルツハイマー病の大脳皮質では、微小血管の変性が起こり、次いでが星状膠細胞が腫大し、その結果として微小血管から星状膠細胞を通して行われる物質輸送が慢性的に障害されている事が、神経細胞脱落の原因の一つである可能性が確認された。なお、この結果は平成8年11月に米国で開催された、ニューヨーク科学アカデミー主催の「アルツハイマー病の血管病変に関するシンポジューム」で招待講演を行った。 免疫組織化学的に、老人斑の構成成分としてMCP-1陽性のミクログリアが存在することを証明した。この事は老人斑のアミロイド形成にミクログリアが重要な役割を演じる可能性を示唆する。 また、アルツハイマー病の患者群の内、重度の痴呆を呈する患者では、アポリポ蛋白遺伝子ε4の頻度が高いことを証明した。
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