びまん性レビー小体病の病態に関する研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07457212
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 横浜市立大学
• 研究代表者: 小阪 憲司 横浜市立大学, 医学部, 教授 (60023800)
• 研究分担者: 後藤 健一 横浜市立大学, 医学部, 助手 (00254201) ; 小田原 俊成 横浜市立大学, 医学部, 助手 (00244426) ; 大西 秀樹 横浜市立大学, 医学部, 講師 (30275028) ; 井関 栄三 横浜市立大学, 医学部, 助教授 (30203061)
• キーワード: びまん性レビー小体病 / ユビキチン陽性変性神経突起 / ユビキチン陽性顆粒 / 海面状態

研究概要

平成8年度の研究の中心は、海馬領域における海面状態、ユビキチン陽性変性神経突起(UBN)およびユビキチン陽性顆粒状構造物(UPG)の神経病理学的・免疫組織化学的・免疫電顕的研究であった。
びまん性レビー小体病DLBDでは、海馬傍回に海面状態やUPNが出現し、正常老化脳でみられるUPGが減少し、さらに海馬のCA_<2〜3>領域にUPNが出現するのが特異的であることが明らかになった。この海面状態は、ニューロピルの小空胞の集合よりなり、それは嗅内野皮質外側部と扁桃核の基底および副基底亜核に好発し、その分布はUPGの分布と一致していた。さらに、電顕的にその小空胞は主に軸索のシナップス前終末よりなり、UPGと同じ嗅内野皮質の大型錐体細胞のシナプス前終末の変性に由来することが明らかになった。また、海馬のUPNは、同じ大型錐体細胞に由来するperforant pathwayの遠位軸索の変性に由来することが示唆された。
以上より、DLBDの嗅内野皮質と扁桃核の海面状態および海馬のUPNは、ともに同じ投射系、すなわちperforant pathwayの変性によること、これらの部位は大脳辺縁系の主要な構成要素であることから、この変性がDLBDの記憶障害を引き起こすことが示唆された。
さらに、今回の研究のなかで、脳幹にはレビー小体があまり出現せず、大脳皮質や編桃核に多数のレビー小体が出現する新しいタイプのレビー小体病の症例が見出だされ、大脳型レビー小体病として報告したが、この発見はDLBDの位置づけのうえで重要であると思われる。
なお、備品のマイクロ冷却遠心器は、現在進行中の生化学および分子生物学的研究に際して利用されている。

研究成果

• [文献書誌] Kosaka K.et al: "Cerebtal type of Lewy body disease" Neuropathology. 16. 32-35 (1996)
• [文献書誌] Kawanishi S,et al: "Neuropathological evaluation and apolipoprotein E gene polymorphism analysis in DLBD" J Neurol Sci. 136. 140-142 (1996)
• [文献書誌] Kosaka K & Iseki E: "Dementia with Lewy bodies" Current Cpinion in Neurology. 9. 271-275 (1996)
• [文献書誌] Iseki E,et al: "Age-related ubiquitin-positive granular structures in non-demented subjects and neuro degenerative disorders" J Neurol Sci. 142. 25-29 (1996)
• [文献書誌] Mckeith.et al: "Clinical and pathological diagnosis of dementia with Lewy bodies (DLB)" Neurology. 47. 1113-1124 (1996)
• [文献書誌] 小阪憲司: "びまん性レビー小体病の症例" 治療学. 30. 1057-1059 (1996)
• [文献書誌] Kosaka K,et al: "Dractical Neurology of the Elderly" Marcel Dekken, 697-717 (1996)
• [文献書誌] Kosaka K,et al: "Dementia with Lewy Bodies-Clinical,Pathological and Treatment" Cambridge University Press, 238-247 (1996)