研究概要 |
1.Common NIDDM遺伝子全ゲノムマッピング Common NIDDMはいくつかの遺伝因子と環境因子の相互作用の結果として起る。罹患同胞対法は、common NIDDM遺伝子の解析に適している。 これまで東京大学第三内科においてNIDDM罹患同胞対350組のリストアップを行い、うち250組については同胞2人のDNAを集積し、残りの100組については、同胞一方のDNAを集積した。また、罹患同胞対全員について、家族歴、肥満度(現在・既往最大)、発症年令、インスリン分泌能、治療法などについての臨床情報を収集した。これらの対象につき、(1)全ゲノムレベルでの遺伝子マッピング、(2)候補遺伝子(座位)の検討の両方向からのアプローチにより、日本人NIDDM原因遺伝子を同定して行きたい。これまでの検討では、他民族で同定されたNIDDM1,2は日本人NIDDMのメジャー原因遺伝子ではなく日本人NIDDMにおける独自のマッピングの必要性が示された。 2.NIDDMの遺伝要因に関する検討 肥満はNIDDMの最大の発症因子である。肥満の候補遺伝子としては、(1)レプチン/レプチン受容体系とその下流のメラノコルチン/メラノコルチン4受容体(MC4R)系、(2)β3アドレナリン受容体(β3AR)および脱共役蛋白質(UCP-1,2,3)、(3)脂肪細胞の分化調節因子であるPPARγなどがあげられる。本研究では、MC4R、β3AR、UCP-1,-3およびPPARγの遺伝子変異や多型を健常者100名、若年発症高度肥満者44名、NIDDM100名、及びGTT,BMI,V,S,レプチンなどの臨床データのそろった健診受診者278名について検討した。 成績(1)β3AR/Trp64Arg変異を同定した。日本人でのアリル頻度は約20%と高率であり、BMI高値や内蔵脂肪蓄積と有意な相関を認めた。(2)UCP-1遺伝子の-3826A→G変異は既報と異なりβ3AR Trp 64 Arg変異のBMI増大効果を促進しなかった。UCP-3遺伝子に2つの新しい変異を同定した。(3)MC4R遺伝子に従来白人で報告されたlle103Val多型を同定した。また、1家系で新しい変異(His 6Tyr)を同定した。(4)PPARγ遺伝子に新しい変異(Pro 12Ala)を同定した。
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