正常血圧ラットに拘束ストレス(1時間)を与え、脳内各部位におけるET-1およびbNOSmRNA発現を、各々RT-PCR、RNAseプロテクションアッセイにて検討した。その結果、ET-1mRNAは脳内各部で発現量が異なり脳幹部で最大であったが、拘束ストレスに対しては、大脳、視床下部において有意な減少を示した。一方、bNOSmRNAは小脳の発現が最大であったが、拘束ストレスに対しては視床下部において著増を示した。異常から、急性ストレスに際しては、血圧調節に関わりの深い視床下部のETやbNOS遺伝子は各々減少、増加し、血圧上昇に拮抗する事が示唆されると共に、脳内ETやNOもストレス受容機構の一端を担うと考えられた。 SHR-SPにおいて、血圧調節中枢である視床下部室傍核及び視索上核でのET-1とbNOSmRNAの発現をinsitu hybridizationにて検討した結果、正常血圧ラットに比較して、これらの部位におけるbNOSmRNAの発現が有意に減少しており、脳内で降圧作用を示すNOの産生低下がSHR-SPにおける高血圧の発症・進展に関与すると考えられた。 SHR-SPにおいて拘束ストレスを負荷し、視床下部神経核のオンコジーン、CRF、CRF受容体、ET-1、bNOSの核mRNA発現を検討した。その結果、SHR-SPでは対照に比べ、拘束ストレス2時間後における室傍核のCRF、CRF受容体mRNAの発現が有意に亢進しており、SHR-SPでのストレスに対する下垂体-副腎系の過剰反応が、視床下部レベルで生じていることが示唆された。本条件下ではオンコジーンに有意な変動を認めず、また、ET、bNOSは検討中である。
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