研究課題/領域番号 |
07457228
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研究機関 | 国立循環器病センター |
研究代表者 |
山村 卓 国立循環器病センター研究所, 病因部, 室長 (20132938)
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研究分担者 |
菅野 良 国立循環器病センター研究所, 病因部, レジデント研究員
河口 明人 国立循環器病センター研究所, 病因部, 室員 (70214608)
三宅 康子 国立循環器病センター研究所, 病因部, 室長 (00132936)
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キーワード | アポリポ蛋白 / 動脈硬化 / コレステロール / LDL / マクロファージ / スカベンジャー受容体 / TGF-β |
研究概要 |
粥状動脈硬化巣の初期病変における泡沫細胞の多くは血液中の単球に由来するマクロファージとされ、feedback調節機構の働いていないスカベンジャー受容体を介して、過剰なコレステロールを取り込み泡沫化すると考えられている。ヒト単球白血病由来細胞株であるTHP-1細胞株(親株)から、スカベンジャー受容体活性を発現せず、泡沫化しにくい細胞株(TS株)を分離し、その細胞特性を検討した。昨年度の検討から、TS株におけるスカベンジャー受容体活性抑制は、TGF-β1によるものと考えられた。そこで本年度は、スカベンジャー受容体発現抑制機構を解明する一環として、両細胞におけるTGF-β1の発現調節機構を比較検討した。 培養液中のTGF-β1蛋白量は、TPA刺激前には両細胞株ともに低値であった。刺激後は時間経過と共に増加を認めたが、TS株の方がATCC株に比べ約4倍多く認められた。細胞内のTGF-β1 mRNAは、両細胞株とも刺激前は発現を認めなかったが、刺激後は早い時期より起こり、24〜72時間の間で発現量に大差はなかった。また、培養液中に分泌されたTGF-β1で見られたような、両細胞株間での発現量の差は認められなかった。細胞内TGF-β1 mRNAと培養液中のTGF-β1蛋白との間に乖離を認めたため、両細胞株でmetabolic labelingを行い、SDS電気泳動法で分析した。TS株においてはlatent TGF-β1 binding protein(LTBP)と思われるバンドが認められたが、ATCC株ではほとんど認めなかった。細胞内のTGF-β1はLTBPと結合して細胞外へ分泌されることが知られており、両細胞株におけるLTBP発現量の差が、培養液中のTGF-β1量の差と思われた。これにより、TS株では細胞外へのTGF-β1分泌量が増加してスカベンジャー受容体発現が抑制され、アセチルLDLが負荷されても泡沫化しにくいものと考えられた。
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