研究概要 |
我々は、本研究で再生不良性貧血(AA)血球におけるGPIアンカー型蛋白(CD59)の発現を検討し、日本人AAの約30%にGPIアンカー型蛋白(GPI-AP)欠損血球の出現すること、また発作性夜間血色素尿症(PNH)同様、その欠損がPIG-A遺伝子の変異によることを明らかにしてきた。さらにPNHとAAの関連やこれら疾患の発症機序の解明を目指し、以下の検討を行った。 1.高感度CD59検出法を考案し、AA例における微小なGPI-P欠損血球分画の検出を試みた。従来の検査法でGPI-AP欠損の検出されなかったAA患者21例中6例に、本法により微小CD59欠損血球分画を検出し得た。通常法による結果とあわせ、AAにおけるGPI-AP欠損血球の出現頻度は52%にも及ぶことが示された。 2.AAでは高率にGPI-AP欠損を伴うこと、またPNHやGPI-AP欠損AAの一部で複数の異常クローンが見られることから,我々はPNHやAAでは突然変異を高率に起こすような何らかの機序がその発生に関与しているのではないかと考え,これらの疾患における突然変異率を検討した。突然変異率の指標としてしばしば用いられているGlycopholin A(GPA)遺伝子突然変異率測定法を用いた。その結果、PNH9例中5例、AA9例中4例で変異細胞出現頻度の有意な増加が見いだされた。以上の結果は、AAおよびPNHの血液細胞では突然変異率が起こりやすい状態にあることをはじめて示したもので、これらの疾患におけるPIG-A遺伝子異常の発生機序、および異常クローンの増殖優位性のメカニズムについて有用な手がかりとなることが期待される。
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