研究課題
基盤研究(B)
本研究は分子生物学的手段を活用して、外科侵襲時のシグナル発動と神経-内分泌-免疫反応の機序を解明し、この反応を修飾して生体防御能増強をはかる治療法を開発することを目的とする。本研究では以下のような実績を得た。1、栄養による侵襲時の生体反応の修飾腹腔内細菌投与ラットモデルで栄養投与経路や経静脈グルタミン投与による生体反応の修飾を検討した。全く同じ栄養製剤で7日間、経腸栄養またはTPNを施行し腹腔内にE.coliを投与した。経腸栄養はTPNよりも生存率が良好で、腹腔内投与細菌のクリアランスも速く、腹腔内滲出細胞数が多く、局所TNFの産生や全身、遠隔臓器(肺)のIFN-g産生を亢進させた。また同じモデルでグルタミン添加TPNと標準アミノ酸輸液製剤TPNを比べ、前者で血中細菌クリアランスが良好で、腹腔洗浄液や肝臓でのTNF産生が増加し、血中のIL-8は低値で、しかも遠隔臓器である脾臓でのIFN-γ産生を亢進させた。2、成長ホルモン、インスリン様成長因子による生体反応の修飾E.coli投与腹膜炎マウスモデルで侵襲前に6日間GHやIGF-1を投与し、これによって生存率の改善、腹腔浸出細胞によるIL-1、IL-6産生の増強をみた。GH及びIGF-I前処置はヒト好中球のi殺菌能を増強し、さらにIGF-Iはヒト好中球のPMA刺激によるopsonin receptor CD11b(iC3b receptor)及びCD35(C3b receptor)の発現を増強した。3、NO inhibitorやNO donar投与による生体反応の修飾E.coli投与腹膜炎ラットモデルでNO inhibitorを前投与すると、死亡率の悪化、血中TNF値の増加がみられ、また螢光色素標識好中球の肺への接着が増加した。NO donor投与では肺への好中球集積を炎症局所(腹膜)への好中球集積とも抑制した。
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