生体部分肝移植および今後国内で行われる脳死肝移植において、移植される肝臓のviabilityを肝移植術前に評価することは極めて重要である。しかし、その評価法に関する試みは国内外で数多くなされてきたにもかかわらず、現時点でも一定したものは確立されていない現状にあり、その克服が求められてきた。本研究は、ヒトの肝臓のviabilityの評価をin vivoで、短時間かつ非侵襲的に行う上での、in vivo 31P-MRSの臨床的有用性について検討した。 はじめに行ったことは、従来のMRI装置を用いてin vivo 31P-MRSを行うための周辺機器の開発である。これによって、これまで小動物にしか行うことができなかった本検査法を、ヒトにも行えるよう改良した。 次に、肝移植術前にドナーおよびレシピエントにおいてin vivo 31P-MRSによる肝臓のviability評価を行い、手術時の生検肝組織で測定されたadenine nucleotideおよびin vivoでの肝血流量、および術後肝機能検査値との関連について検討を行った。 その結果、in vivo 31P-MRSは、肝組織中のadenine nucleotideと良好な相関を、また有意ではないものの肝血流量との間にも相関を認め、in vivo 31P-MRSの有用性が示唆された。さらに、in vivo 31P-MRSで高値をとった症例において、術後合併症が少ない傾向を認めた。 以上より、前述の目的に対するin vivo 31P-MRSの有用性が示唆された。さらに本法の有用性を確認し、臨床検査としての適性を明らかにするために、検討を重ねたい。
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