研究課題
一般研究(B)
当科における癌性胸腹水に対する局所免疫療法の治療経験と、遺伝子工学の進歩に伴って可能となった遺伝子導入技術を背景として、より腫瘍特異性の高い抗腫瘍性リンパ球を、遺伝子導入腫瘍細胞を刺激細胞として用いることで誘導し、そのリンパ球を治療に用いる間接的な遺伝子療法の開発について研究している。平成7年度の実績として、まず、乳癌性胸水より癌細胞株が1株樹立された。IL-2遺伝子導入については、継代されている腫瘍細胞株5株(胃癌2株、大腸癌2株、膵癌1株)について成功し、IL-2の産生が確認された。抗腫瘍性リンパ球の誘導系の確立として、1)IL-2遺伝子導入腫瘍細胞をマイトマイシンCで不活化し、患者リンパ球と5日間混合培養し、2)抗CD3抗体を固相化したフラスコ内でIL-2存在下培養して、3)細胞数の増加に伴って、フラスコを大きくする、という培養方法を確立した。この培養系の利点は、1)患者血液10mlから最終的に10^<10>個の抗腫瘍性リンパ球が採取可能である、2)抗腫瘍活性は最低1ヶ月維持される、3)誘導リンパ球へのネオマイシン遺伝子導入(RCR)は認められていない、などであり、臨床応用に際し、安全で、極めて実際的であることが判明した。このように、当初の計画どうり研究が展開されており、さらに今後として、上記活性化リンパ球の臨床応用の機会を伺っている。
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