WFラットに同所性に移植されたLEW肝(LEW→WF)は、術語4日目をピークとする一過性の肝障害(急性拒絶反応)を起こすが回復し永久生着する。そこで、この長期生存肝移植(OLT)ラットに、ホモジナイズした正常LEW肝を腹腔内に投与すると、宿主内にドナー抗原に対するCD8+CTLが誘導され、移植肝が破壊(肝障害が誘導)される。しかしながら、長期生着肝(LEW由来)を摘出しOLTラットに投与しても肝障害は誘導されない。つまり、長期生着肝の免疫原性は消失していた。そこでまず、この免疫原性消失の時期を明かにするために各時期(術後1日、3日、1週、2週、4週、6週、6カ月目)の移植肝を長期生存OLTラットに投与すると、興味あることに術後3日目までには免疫原性が消失していた。この現象は、手術による影響や非特異的な炎症反応によるものではなく、ドナーの抗原提示細胞が移植片より末梢に遊走するためであった。一方、LEW肝を移植した後長期生存したWFラットに心臓移植を行うと、third partyの心臓は8日で拒絶されるが、LEW心は200日以上生着した。即ち、ドナー抗原に特異的な免疫応答能の低下を認めた。 以上より、トレランスの機構として、宿主側の要因にドナー抗原に特異的な反応性の低下を認めること、移植片側の要因に移植肝の免疫原性が術後1週目までに消失していることが関与していると思われた。
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