cDNA bankの条件は、情報が保存可能であること、繰り返しその情報を使用できることである。Oligo d(T)固定化プレートGenePlateに保存されたcDNAについて、1)繰り返し2nd-cDNAの合成が可能であるか2)6ヶ月の保存の後にも2nd-cDNAの合成が可能であるかを検討した。 培養細胞から抽出したmRNAをプレート上でcDNAに変換した後、これをテンプレートとして10回2nd-cDNAを合成し、PCRによりβ-actinを増幅した結果、10回ともβ-actinのバンドが確認され、繰り返しの2nd-cDNA合成が可能であることを証明した。大腸癌組織10症例から抽出したmRNAをcDNAに変換し、2nd-cDNAのβ-actin、ODC、junを増幅したものと、そのプレート上で合成された1st-cDNAをマイナス20℃で6箇月間保存した後に再度2nd-cDNAを合成して同様の増幅を行ったものとを比較し、6ヶ月間の保存が可能であることを証明した。 mRNAを捕捉するためのキットとしてオリゴdTカラム、マグネットダイナビーズなどがあるが、cDNAへの変換が固相上で可能で、保存できるシステムはなかった。GenePlateとダイナビーズとの比較試験の結果、同量の核酸から捕捉できるmRNA量は、両者の間で差はなく、cDNAの合成能は、ダイナビーズよりも有意に優れていた。 実際に作成した大腸癌患者のCancer cDNA bankを用いて、実際に転移関連因子を検索した。マトリックス分解酵素であるマトリライシンの大腸癌における発現を観察した結果、マトリライシンは癌部でのみ発現が認め、更に癌の進行とともに発現が増強することが解明された。 以上から、GenePlateによるcDNA bankは、情報の保存と繰り返し利用が可能なシステムであり、今後の癌研究にとって有用であることが証明された。
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