研究概要 |
discordant異種移植における超急性拒絶反応(HAR)の抑制と、それに引き続く遅延型異種拒絶反応(DXR)モデルの作成。 実験1:discordant異種移植のモデルである、モルモットからラットへの心移植において、補体抑制因子としてsCR1(soluble complement receptor type 1,TP-10)、抗血栓因子としてAT-III(antithrombin III)を併用し生着時間を検討した。その結果、コントロール(生食)群(n=10)、AT-III群(n=7)、sCR1群(n=6)、AT-III+sCR1群(n=6)における平均生着時間はそれぞれ、18.6分、32.3分、122.5分、250.0分であり、各薬物単独投与よりも有意の生着時間延長効果が得られた。併用群においても生着時間は約4時間程度であるが、細胞浸潤は少なかった。 実験2:実験1では、生着時間が短く当初目的のDXRモデルには不十分であったため、補体抑制物質としてより強力なCVF(QUIDEL社、30U/kg,iv.にて、移植前日、当日の2回投与。)を用いた。レシピエントとしてDA ratと、その突然変異でNK活性不全体であるBeige ratを用いた。その結果平均生着時間はコントロール(無処置)群で、8分(DA rat,n=3)、10分(Beige rat,n=3)に対し、CVF群では20時間(DA rat,n=3)、28時間(Beige rat,n=3)であった。CVFによって著明な生着延長効果が得られ、組織学的に単核球優位の著明な細胞浸潤が見られ、DXRモデルの作成に成功した。さらにCVF群でDA ratより、Beige ratで有意の生着延長が得られたことはDXRにおける、NK細胞の重要性を示唆するものである。これらの結果を考え、今後はDA ratにCVFを投与した状態で、NK活性を抑制(抗体投与など)し、DXR抑制の可能性について検討する予定である。
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