ヒト生理活性物質のみから構成される新抗癌剤の開発

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07457262
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 慶応義塾大学
• 研究代表者: 上田 政和 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50142419)
• 研究分担者: 竹島 薫 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50236460) ; 神野 浩光 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20216261) ; 菊池 潔 慶應義塾大学, がんセンター, 助手 (30129407)
• キーワード: ヒト生理活性物質 / ミサイル療法 / EGF / RNase / リコンビナントタンパク

研究概要

本年度の研究により以下の点が明らかにされた。
1。ヒトEGFとウシRNaseとをSPDPとiminothiolineとによりS-S結合で架橋させたconjugateは、EGF受容体に対する親和性はEGFとほぼ同様であった。
2。上記conjugateを、ヒト扁平上皮癌細胞株や乳癌細胞株にin vitroで投与したところ、それぞれの細胞株が有するEGF受容体数に依存した殺細胞効果が認められ、その効果は大量のEGFにより抑制された。
3。岡山大学妹尾助教授より供与されたヒトリコンビナントRNaseとヒトEGFとのconjugateをウシRNaseと同様化学的に結合させた。
4。ヒトRNaseとヒトEGFの混合物を、ヒト扁平上皮癌細胞株や乳癌細胞株にin vitroで投与しても殺細胞効果は認められなかったが、上記conjugateを投与すると、細胞当りのEGF受容体数に依存した殺細胞効果が認められた。
5。農林水産省小松研究員および岡山大学妹尾助教授との共同研究によりヒトRNaseとヒトEGFのcDNAを遺伝子工学的に結合させ、プラスミッドに組み込み大腸菌で、ヒトEGF・RNaseのリコンビナントタンパクを産生させた。作製した物が、目的とした物であることは塩基配列、アミノ酸分析、分子量から確認された。
6。ヒトEGF・RNaseのリコンビナントタンパクを分離・精製して、ヒト扁平上皮癌細胞株にin vitroで投与すると、化学的に結合させたconjugateと同様細胞当りのEGF受容体数に依存した殺細胞効果が認められた。

研究成果

• [文献書誌] Jinno H., et al.: "EGF receptor-dependent cytotoxicity for human squamou carcinoma cell lines of a conjugate composed of human EGF and RNase" Life Sience. (in press).
• [文献書誌] Jinno H., et al.: "EGF receptor-dependent cytotoxic effect by EGF-ribonuclease conjugate on human cancer cell lines." Cancer Chemotherapy and Pharmacology. (in press).
• [文献書誌] Kitagawa Y., et al.: "Further evidence for prognostic significance of EGF receptor gene amplification in patients with esophageal squamous cell carcinoma." Clin. Cancer Res.(in press).
• [文献書誌] Jinno H., et al.: "Effect of an adriamycin-immunoconjugate that recognizes the c-erb B-2 product on breast cancer cell lines." Surgery Today. (in press).
• [文献書誌] Kitagawa Y., et al.: "Effect of endogenous and exogenous EGF on the growth of EGF receptor-hyperproducing human squamous cell carcinoma implanted into nude mice" Br. J. Cancer. 72. 865-868 (1995)
• [文献書誌] 上田政和: "DDSの進歩1995-1996" 中山書店, 267 (1995)