リンパ球のアポトーシス誘導に基づいた移植免疫寛容の導入

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07457265
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 国立小児病院(小児医療研究センター)
• 研究代表者: 鈴木 盛一 国立小児病院, 小児医療研究センター・実験外科生体工学部, 部長 (00111386)
• 研究分担者: 掛札 敏裕 国立小児病院, 小児医療研究センター・実験外科生体工学部, 研究員 ; 四宮 貴久 国立小児病院, 小児医療研究センター・実験外科生体工学部, 室長 (30196414) ; 絵野沢 伸 国立小児病院, 小児医療研究センター・実験外科生体工学部, 研究員 (40232962)
• キーワード: FTY720 / アポトーシス / Isaria sinclairii / ISP-1 / 心移植 / 肝移植 / ラット

研究概要

菌類の一種Isariasinclairiiの培養濾液中から免疫抑制活生のある物質ISP-Iを分離し、それを化学修飾して得られた合成物FTY720は元の物質より毒性が少なく、in vitroでの免疫抑制効果がより強力であることが明らかにされた。FTY720をラットの脾細胞とin vitroで3時間作用させると、電顕像で核の濃染、細胞表面のmicrovilliの消失、及びアポトーシス小体の形成が認められ、アガロース ゲル電気泳動ではDNAの断片化に基づく特徴的なラダー像が得られ、アポトーシスが起こっていることが明らかにされた。しかもFTY720によるアポトーシスはリンパ球に特異的であり、多形核白血球、単球などは影響を受けなかった。ラットの心移植に於いてFTY720を0.05〜10mg/kgの量を経口投与したところ、投与量依存的に生着延長効果が得られた。ラット肝移植に於いても効果が認められ、ラットの生存延長効果は心臓移植よりも優れていることが明らかにされた。また、FTY720を移植前に投与しても効果が認められ、さらに拒絶反応が発現してから投与しても生着は延長した。このようなことから、FTY720はresting cells並びにactivatedcellsに作用し免疫抑制効果を発揮するものと考えられた。作用機序については、リンパ球をin vitroでFTY720と培養するとアポトーシスの成立に先立ってBaxの増加、引き続いてBcl-2の低下が認められ、この薬剤は遺伝子に作用して、プログラム死を起こすことが明らかにされた。Fas抗原との関連性については、その発現していないmutantであるMRL-lpr/lprマウスの胸腺細胞にFTY720を作用させても細胞死が誘導されることから、FTY720によるアポトーシスはFas抗原を介さないものと考えられた。

研究成果

• [文献書誌] S. Suzuki 他: "A novel immunossuppress ant, FTY720, with a unique mechanism of action induceslogy-term graft acceptance in rat and dog allatransplantation" Transplantation. 61. 200-205 (1996)
• [文献書誌] H. Ohdan 他: "Diagnostic value of near-infrared spectroscopy for monitoring the rejection response follouring rat liver transplantation" Transplant Proc. 27. 1012-1013 (1995)
• [文献書誌] S. Suzuki他: "Immunosuppressive effect of new drug, FTY720, on lymphocyte response in vitro and cardiar allograft survival in rats." Transplant Immunology. (in press).
• [文献書誌] S. Suzuki他: "Long-term graft acceptance in allografted rats and dogs by treatment with novel immunosuppressant, FTY720." Transplant Proc. (in press).
• [文献書誌] S. Suzuki他: "Induction of lymphocyte apoptosis and prolongation of allograft survival by FTY720." Transplant Proc. (in press).
• [文献書誌] T. Kawaguchi他: "TFY72 a novel immunosuppressant possessing unique mechanisms III. Synergistic prolongation of canine renal allograft survival in combination with cyclosporin A." Transplant Proc. (in press).