1、ラット大腸全摘モデルの確立:大腸全摘後残存回腸と肛門を吻合し、術後10週まで経過観察の可能なモデルを確立した。まず、術後の一般状態について水分電解質の出納を把握した後、Na、Kの上皮における分泌調節機構について電気生理学的、分子生物学的に検討中である。 2、術後体重は、経過を通じ対照群の約70%と減少が持続した。術後経口摂取量に変化を認めないものの、水分摂取量は有意に増加した。便中の水分、Na、K排泄量はいずれも術後2倍以上増加し、それと対照的に尿中Na、K排泄量は著しく減少した。 3、血漿アルドステロン値は経時的に術前値の10倍以上増加したのに対し、血漿コルチゾール値は一定の傾向を示さなかった。 4、上皮細胞において電解質の移動に直接関与するミネラルコルチコイド受容体、11b-hydroxysteroid dehydrogenase、アミロライド感受性Naチャンネルa-、b-、g-subunit、Na-H exchanger、Na-K ATPase、などの遺伝子の変化について検討する目的で、これらすべてのcDNAを入手済みである。現在のところ、アミロライド感受性Naチャンネル遺伝子の発現の変化を認めている。 5、Ussing chamberをもちいた、電気生理学的検討を開始した。残存小腸粘膜では、十分なbiabilityを保ちながら各種channel blockerの投与により短絡電流の変化が認められている。 以上のように、当初の計画どおりほとんど全ての方法論の導入が終了しており、臨床へ直接feedbackすることが可能な新知見の集積が始まっている。
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