研究概要 |
前年度までに解析を完了していた表面型の早期大腸腫瘍性病変に加え、新たに入手した15例の病変について、APC遺伝子のMCR領域ならびにエクソン3.4における微小変異について検討を加えた。6例において変異が検出され、その内訳は、点変異によるストップコドンが2例、2塩基の欠失が2例、1塩基の欠失が1例、1塩基の挿入が1例であった。挿入・欠失が認められた例ではすべてがフレームシフトによりストップコドンを生じるもので、APC遺伝子変異が証明された6例すべてがストップコドンを生じる変異であった。形態別にみると、表面隆起型(IIa,IIa+IIc)4例、表面陥凹型(IIc,IIc+IIa)2例であった。これまでの解析結果では、これら表面型病変でのAPC遺伝子変異の頻度は、非常に低かった(24例中2例、8%)が、今年度の解析では15例中の6例(40%)で、この頻度は進行癌や明らかな隆起性病変でのAPC遺伝子変異の検出頻度とほぼ同等であり、表面型病変においてもその病変の発生にAPC遺伝子変異が強く関与していることを示唆している。p53遺伝子変異の解析では、これまでの解析結果と同様に、高頻度で遺伝子変異が検出されており、同遺伝子変異は癌化に必須の変化と考えられる。また、moderate atypiaと診断された病変においてもp53遺伝子変異を有する例があり、これら病変は、分子遺伝学的には既に癌化しているものと考えられる。 APC遺伝子変異の頻度については未だ結論が得られておらず、今後、初回解析例の再検討と追加症例の検討が必要である。
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