研究概要 |
本研究では膵癌の転移・浸潤過程における膵癌細胞の増殖と基底膜浸潤について局所における各種増殖因子(HGF,bFGF,EGF,PDGFなど)または環境因子(インスリンやコレシストキニン(CCK)など)との関連から明らかにし,その浸潤、転移過程における制御の可能性を探ることを目的とした. ヒト膵癌細胞(PANC-1,MIA PaCa-2,BxPC-3,AsPC-1)において,癌の原発巣あるいは転移巣形成期の血管新生に重要な役割を果たすbFGFが濃度勾配依存性に膵癌の基底膜浸潤の方向性を規定していること,また,HGFレセプター/c-METはMIA PaCa-2を除くすべての膵癌細胞に発現がみられ,HGFの浸潤・増殖促進作用はc-METを発現する細胞に特異的に作用し,この増殖因子もケモアトラクタントとして膵癌の浸潤・転移の方向性を規定していることが示された. ハムスター膵癌細胞KH-PCまたはHapT1を脾注または静脈内投与し,肝および肺への血行性転移をみると,脾注3週間後,KH-PCは肝表面に明らかな肝転移巣を形成したのに対し,HapT1ではその頻度は有意に低かった.静脈内投与では両細胞とも組織学的肺転移巣を形成した.肝抽出液あるいは門脈血清で培養されたKH-PCは,肺抽出液または静脈血清の培養に比べて有意に浸潤・増殖能が促進したが,HapT1では,肝抽出液の培養により浸潤・増殖能は促進されなかった.しかし,インスリン,CCKなどの環境は高転移株KH-PC細胞,低転移株HapT1細胞ともにその増殖・浸潤に影響を与えなかった. さらに膵癌細胞の転移・浸潤と局所の各種増殖因子または環境因子との関連について微小環境を構成する細胞の機能的相互関係から検討しなければならない.
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