肝細胞癌切除114例で診断時の血中AFP値におよぼす臨床病理学的因子について検討を行った。診断時に血中AFP値が100ng/ml以上の高値を示した症例の割合は1980年の57.2%から1993年の33.3%までに減少した。多変量解析で血中AFP値にもっとも影響をおよぼす因子は、ウイルスマーカーであった。血中AFP値が200ng/ml以下の症例の割合はHCV抗体陽性例86%で、HBs抗原陽性例の39%より有意に多かった(p<0.01)。一方、AFP値が1000ng/ml以上の症例の割合はHBs抗原HCV抗体陽性例36%で、HCV抗体陽性例の10%より有意に多かった(p<0.01)。HBs抗原陽性肝細胞癌の割合は1980年の48%から1993年の15%と減少している。一方、HCV抗体陽性例は1993年は69%であった。肝細胞癌診断時の血中AFP低値例の増加は、HCV抗体陽性肝細胞癌の増加によるものと思われた。
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