研究概要 |
我々は、新生児臓器が免疫系が未発達である点に注目して、ラットモデルを用いて小児小腸移植の臨床応用のための基礎的検討を続けてきた。これまで明らかになったことをまとめ報告する。(1)同系間移植での検討:新生仔の小腸を血管吻合せずに移植する方法(N-SBT)を用いた。(実験1)新生仔臓器のnatural revasculization率を検討するため、生後直ちに種々の臓器(小腸、脾、肝、腎、心、膵臓)を成熟同系ラットの皮下に移植した。小腸については、生後経時的(24時間以内,4,11,18日目)にその生着率を検討した。(実験2)同系N-SBTでgraftを皮下及び大網内に移植し、graft生着全小腸を摘出し置換手術を行った。graftの評価は病理組織所見ならびに筋電図を参考にした。さらに移植graftの機能を脂肪吸収量の改善度として評価した。【結果および考察】各種臓器の生着率は、脾臓8/7(87.5%),小腸12/17(70.6%),腎臓5/12(41.7%),心臓2/10(20%),肝臓0/10,膵臓0/8であり、臓器により血管新生に差がみられた。小腸の生着率は経時的に低下し生後11日以後ではほとんど生着しなかった。皮下及び大網内で生着率に有意差はみられなかったが、筋電図上で前者は小腸固有の波型は得られなかった。大網内移植で正常に近い波型が認められ、置換手術においても、長期生存が得られた。(2)異系間移植での検討:近交経ラットLEW(RT1^1)をドナー、PVG(RT1^0)をレシピエントとして使用した。新生仔及び成熟ラット小腸の免疫原性を比較する目的で、15-Deoxyspergualin(DSG)5mg/kg/14daysを投与し生着率を比較した。さらにレシピエントの処理として、同様のDSG投与下で脾摘さらに脾摘+胸腺摘除を行い免疫抑制状態を比較した。拒絶の判定は、肉眼所見に組織学的所見を加味し行った。成熟小腸をドナーとし血管吻合による小腸移植を行った場合は、同上免疫抑制プロトコールでは、薬剤の中断とともに激しい拒絶反応が認められた。一方、アロN-SBTの場合、血管吻合を行わなくともホストより血管新生を認め、DSG短期投与下で50%に4週以上生着を認めた。さらに新生仔小腸移植において脾摘を加えると全例で6週以上の生着を認めた。
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