研究概要 |
研究成果 1.MAGE抗原の正常細胞における発現とその意義 MAGE癌抗原はメラノーマ関連癌抗原と異なり、正常細胞には睾丸を除いて全く発現されておらず、したがってその生理的機能は不明であった。そこで抗MAGE-1及び抗MAGE-4抗体を作製し、免疫組織染色法により睾丸各種細胞におけるMAGE癌抗原の局在について解析した。その結果、MAGE-1及び-4抗原は精粗細胞(Spermatocytes)及び初期の第1次精母細胞(primary spermatocytes)のみに細胞内蛋白として発現されていることが明らかとなった(Takahashi et al.,Cancer Res.,55:3478〜3482,1995)。一方、第2次精母細胞や精子細胞には発現されておらず、MAGE抗原は精子形成の初期過程において重要な役割を果たすことが示唆された。本研究の成果はMAGE癌ワクチンを臨床応用した場合の副作用の予測に重要な示唆を与えるものと考えられる。 2.MAGE-4抗原のELISAによる組織及び血中レベルでの定量と臨床応用。 MAGE-4抗原に対する特異的モノクローナル及びポリクローナル抗体を作製し、それらによるELISAを用いて癌組織及び癌患者血清中MAGE-4抗原の定量化に成功した(Shichijo et al.,J.Immunol.Meth.186,137-149,1995)。同ELISAは、癌組織では10pg/mg,血中では1ng/mlレベルのMAGE-4抗原を特異的に定量可能であり、きわめて高い感度と考えられる。同ELISAにより、癌患者血中レベルで有意に高い症例は肺癌では40%、頭頚部扁平上皮癌では45%、食道癌の消化器癌に35%と高値を示した(Shichijo et al,JJCR,87,751-756,1996)。また肝癌患者血清においてもMAGE-4値は有意に高いのみらなず肝癌リスクの高いC型肝炎ウイルス陽性肝硬変患者血中MAG-E-4値も高値を示した。一方アルコール性肝硬変やB型肝炎ウイルス陽性肝硬変患者血中MAGE-4値の上昇は認められなかった。これらより血中MAGE-4値の測定は肝癌(C型ウイルス陽性)の早期診断にも有用と考えられた。 血中MAGE-4抗原レベルは術後癌消失に伴ってすみやかに正常化する。さらに、極く初期の癌を有する患者においても高値を示す場合が多く、早期診断の有用な手術をなりえることを明らかにした(Iwamoto,et al.,Int.j.Cancer,in press,1997)。本法の開発はMAGE癌ワクチンの対象者を決定する重要な検査法となると考えられる。
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