新生児家兎摘出心をcrystsloid solutionにて灌流するworking heart modelを用い低温下multidose cardioplegiaの心筋虚血再灌流障害に於けるNA-H exchangeの役割を明らかにした。その結果、心筋保護液のpHを増加させると心機能回復は低下し逸脱酵素も増加し、acidicな液の方がalkaloticな液よりも有効であった。また、心筋保護液に特異的Na/H exchange blockerを加えたところ心機能回復は有意に改善した。さらに緩衝剤として細胞膜非通過性のHEPESを用いると心機能回復は不良であった。これらのことよりNa/H exchangが再灌流障害に重要な役割を果たしており、その軽減には細胞内外のpH、緩衝能を変えることにより可能と考えられた。 次に、成人で臨床使用されているSt.Thomas(重炭酸イオンを緩衝剤とする細胞外液型)とBretshneider液(histidineを用いた細胞内液型)の未熟心における効果を比較した。両緩衝剤とも細胞内に移行しbufferとして作用するがBretshneider液のほうが高い緩衝能を有する。結果は虚血後の心機能回復はsingle-dose、multidose両法ともSt.Thomas液を用いた群がBretshneider液より良好であった。 目標である臨床応用を考慮した場合、血液による灌流モデルの確立は必須である。まず成熟ラットを血液にて交叉灌流するLangendorff modelを試み、血球成分や接着分子の再灌流障害における役割を検討した。その結果、monoclonal antibody投与群では、心機能、冠血管抵抗の回復共に良好であった。このことは成熟心では白血球接着分子が虚血再灌流障害に関与しているものと考えられた。
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