研究概要 |
【目的】bFGFの血管内投与による血管新生効果は既に確立されている。本研究では虚血心筋に対し、外科手術的にbFGFの心外膜および心筋内局所投与し、その血管新生効果を検討することを目的とした。【方法】1)雑種成犬を用い、左冠状動脈前下行枝を2段階結紮し虚血心筋モデルを作成し、ヒト遺伝子組換え型bFGFを心外膜および心筋内に下記の条件下で投与し、投与後3〜4週間で血管造影検査にて血管新生の効果を検討した。一部は病理組織学的検査を行った。(1)bFGF10μg,(2)bFGF10μg+ヘパリン1mg,(3)bFGF30μg,(4)bFGF30μg+ヘパリン1mg,(5)bFGF300μg+ヘパリン10mg。2)上記実験(5)を日本猿を用いて行った。3)雑種成犬の虚血心筋モデルに冠状動脈バイパス手術を行い、(5)を投与した。【結果】1)〜3)の実験では血管造影上側副血行の存在はは認められたが、bFGFの投与部位に有意な血管新生効果を認めることはできなかった。【考察】初年度の研究において、実験1)の(1)〜(4)を行い、血管新生効果が認められなかったため、次年度の研究においてbFGFの大量投与を検討したが効果が認められなかった。実験動物の種差を考慮し、日本猿を用いて同様の実験を行ったがやはり効果を認めなかった。また、最終年度には冠状動脈バイパス下に大量投与を行ったが血管新生効果は明らかではなかった。遺伝子組換え型bFGFは常温では数分で失活することが判明している。局所投与では血管内投与よりも細胞内に取り込まれるのに時間がかかり、心筋細胞内に取り込まれる前にbFGFが失活し血管新生効果を発現しなかったものと考えられた。
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