〈目的〉 今回実験的に、間歇的循環停止法が、総循環停止時間を延長できる可能性について今年度は細胞内小器官である、脳内ミトコンドリアの呼吸商を元に検討した。 〈方法〉 平均9.2kgのビ-グル犬を使用し体外循環を施行。鼻咽頭温を18度になるまで冷却。以下の4群に分けた。 超低体温循環停止法(1)40min(2)60min(3)80min (4)超低体温間歇的循環停止法【20分循環停止10分再灌流を6回繰り返す。】 また鼻咽頭温を35度まで復温後脳組織を取り出し、ミトコンドリアを抽出し、その呼吸商を比較した。 〈ミトコンドリア呼吸商に関して〉 80min循環停止群のみ他の群に比べ、低値を示した。間歇的循環停止群は、総循環停止時間が120分に及ぶにもか変わらず、ミトコンドリア呼吸商は良好に保たれていた。また水分含有量に関しても、間歇的循環停止法は、単純循環停止群に比べ、有意に少なかった。 〈考察〉 間歇的循環停止法は、総体外循環停止時間が超低体温循環停止群に比し、循環停止時間が長いにも関わらず、ミトコンドリア呼吸商は、良好に保たれており、また浮腫も少ない。その結果、間歇的循環停止法は、脳虚血による障害が、軽減されることが示唆された。 〈今後予定〉 今後はPETを利用する実験を行う予定であったが、実際体外循環を使用すると、誤差が非常に大きくなることが判明した。そのため、来年度はPETの利用を断念し、その代わりに近赤外分光法を使用し、real timeに体外循環中の脳内酸化状況を測定し、嫌気性代謝との関連を含め検討する予定である。
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