研究概要 |
1)トレハロースを含む新しい保存液による気管冷凍保存及び免疫抑制剤を使用しない同種気管移植法の開発:DMEM,10%DMS0,20%FCS,0.1M trehaloseを含む新しい気管冷凍保存液:trehalose-cryopreservation液(TC液)を開発し、1ヶ月の冷凍気管保存が可能なことを明らかにした。本年度は保存液を使用して、平均9ヶ月の気管冷凍保存を行い、免疫抑制剤を使用しない犬同種気管移植を試みた。 雑種成犬の気管を6-10リング摘出、TC液に浸漬後、deep freezerにより-85℃まで冷却し、気管を平均9ヶ月保存した。9ヶ月後にレシピエント犬の縦隔気管を5リング摘出し、同部に解答した保存気管を同種同所移植し、有茎性大網で被覆した。術後に免疫抑制剤は使用しなかった(n=12)。コントロールとしてEC液で10℃16時間保存したグラフトによる同様の移植を行った(n=6)。冷凍保存群では組織検査のために早期に犠牲死させた1例を除いて全例2ヶ月以上生存し、グラフトの壊死、狭窄、拒絶などの所見は認められなかった。一方、コントロール群は全例拒絶に伴うグラフトの壊死、狭窄により1ヶ月以内に死亡した。以上より、TC液による気管の長期冷凍保存は可能で、凍結によりグラフトのviabilityを保ちながら抗原性を除去することができることが明らかとなった。 2)分離気管移植による10リングの気管移植:大網被覆を行っても10リングの気管移植が不可能なことはすでに報告されている。移植後のグラフトの中央部の血流を乏しいことに注目して、グラフトを中央で膜様部を残して切断し同部に大網を挿入して早期の血流回復をはかる分離気管移植を考案した。現在、同実験は進行中であるが有望な結果が得られそうである。
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