血中胸腺液性因子(Thymulin)の定量を行った。 1.正常人において血中胸腺液性因子(Thymulin)を測定した。臍帯血では高く、年齢の進行とともに低下した。20歳未満では全例に検出されたが、60歳以上では陽性率が低下した。胸腺の形態学的な退縮と一致しており、血中thymulinは胸腺機能を反映すると考えられる。 2.胸腺腫患者24例について血中thymulin活性を測定したところ、1/2↓は3例、1/2〜1/4は4例、1/4は3例、1/4〜1/8は3例、1/8は5例、1/8〜1/16は1例、1/16は3例、1/16〜1/32は1例、1/64は1例であり、対数変換した指数平均は2.65±1.23であった。年齢対応した正常人コントロールでは、1/2が10例、1/2〜1/4が11例、1/4〜1/8が3例で、指数平均は1.42±0.47であり、胸腺腫患者の術前の血中thymulin活性は正常人に比し有意に高値を示した。さらに、病期、組織型、リンパ球混在度などにつき比較検討した。組織型別にみると、polygonal cell typeのthymulin活性指数平均は2.15±0.93、spindle cell typeでは3.45±1.47、mixed typeでは2.88±0.74であり、各組織間に差を認めなかった。正岡の臨床病期分類別にみると、I期の指数平均は3.00±1.23、II期は2.50±1.00、III期は1.00、IV期は2.20±1.12であり、各病期間に差を認めなかった。リンパ球混在度別にみると、absentの指数平均は2.50±1.08、scantは3.10±1.80、moderateは2.50±1.05、predominantは2.68±0.41であり、各混在度間で差を認めなっかた。胸腺腫患者では血中thymulin活性の上昇がみられたが、腫瘍の進展や組織型との関連は認めなかった。血中thymulinは付随胸腺部分に由来しており、腫瘍の進行よりむしろ腫瘍発生を許す状態を反映している可能性がある。
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