研究概要 |
1.肺腺癌における多段階遺伝子変異解析 肺腺癌患者の前癌病変(hyperplasia, dysplasia, carcinoma in situ)の解析から、肺腺癌患者の発癌過程においては、3pおよび9pのLOHの頻度がhyperplasia, dysplasiaで非常に高いことから、これらの座位に存在する癌抑制遺伝子がすでにhyperplasia, dysplasiaの段階で不活性化されること、一方、K-ras遺伝子は、carcinoma in situの段階で変異を起こしていることを明かにした。したがって、3pおよび9pは癌発生の早い段階で作用し、K-ras遺伝子は癌の進展や悪性度の獲得に作用していることが示唆された。 2.3pのLOHの解析 非小細胞肺癌108例の検討にて、3pのLOHをmicrosatellite markerを用いて検討したところ、3pのLOHは43%に認められ、かつ、偏平上皮癌で高頻度(73%)に認められた。一方、予後に関しては偏平上皮癌では規定されなかったが、腺癌でLOH例は有意に予後不良であり、悪性度の評価として重要であることが示唆された。 3.骨髄中の微量癌細胞の検出 上皮細胞の指標であるサイトケラチンに対するモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色にて、骨髄中の癌細胞の検出を行った。肺癌患者24例の骨髄を検索したところ、進行例の第III,IV期で67%の高頻度で、また第I,II期においても33%の頻度でサイトケラチン陽性細胞を検索した。これらの患者は高頻度で血行性遠隔転移を起こしていることが認められ、骨髄中の癌細胞の検出は、極めて早期に血行性転移を診断する指標として重要であることが明らかとなった。 さらに、次年度にp16, p15遺伝子の解析、およびp53, Wafl, cyclinDの細胞周期との関連を解析し、肺癌における生物学的特性を解析する予定である。
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