研究概要 |
1.ヒト脳腫瘍組織のMGMT mRNA発現量とアルキル化剤治療効果 化学療法の対象である悪性グリオーマ11例(悪性星状細胞腫7例,膠芽腫4例)で,RT-PCR法で摘出標本のMGMT mRNAを測定した.手術・放射線治療後にACNUおよびMCNUを1〜5ク-ル動注し,time to progression(TTP)とsurvival time(ST)を検討した.悪性グリオーマのMGMT mRNAはU-138MG細胞(MGMT活性1,316fmol/mg)の4〜56%発現していた.中央値19%で低発現群(n=6)と高発現群(n=5)に分けて比較すると,低発現群のTTPは6ヵ月であったのに対して,高発現群では2ヵ月の短期間であった(P<0.05 by Gehan's Wilcoxon test).両群でSTに有意な差は認められなかった. 2.MGMT活性阻害剤によるアルキル化剤効果増強 阻害剤としてbenzene環にCF_3を導入したO^6-benzylguanine誘導体,O^6-(pyridylmethyl)guanine誘導体を合成して用いた.HeLa S3細胞の蛋白分画を抽出し,阻害剤1〜10μM濃度で2時間前処理後のMGMT活性を測定し、併せて,ACNUの殺細胞効果の変動を解析した.O^6-benzylguanineのbenzene環の3位または4位をCF_3で置換した化合物,およびO^6-(3-or4-pyridylmethyl)guanine誘導体がMGMT活性を低下させた.一方,benzene環の2位に置換基を有した誘導体による効果は少なかった.誘導体前処理後にACNUを2時間反応させたところ,3位と4位置換誘導体でACNUの殺細胞効果が5倍以上に増強された.
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