ラットに放射線照射を施行することによって“痴呆モデル"を作製し、以下のような解析を行った。 1.生後6カ月のFischer344ラットを、全脳に25Gy照射した群とコントロール群に分け、体重や行動の変化を観察した。さらに処置後12カ月の時期に、Morrisの水迷路と受動的回避学習の二つの課題を用いて高次機能障害の出現の有無を検討した。照射群で明らかに障害を認めた。組織学的検索では、照射群の白質に壊死巣とGFAP陽性のastrocyteの増加を認めた。 2.同様の方法で、生後6カ月のFischer344ラットの全脳に1回5Gyで計40Gyの分割照射を施行した場合は、高次機能障害が出現しても白質に壊死は認めなかったが、GFAP陽性のastrocyteの増加を認めた。 3.照射方法および照射量と白質障害の関係を検討するため、生後6カ月のFischer344ラットの全脳に30Gy照射した群、全脳に1回5Gyで計40Gyの分割照射を施行した群、コントロール群で、処置後6カ月の時期に、高次機能障害の出現の有無を検討した。どの群間でも有意差はなく、その組織学的検索では、白質に壊死は認めず、30Gyの1回照射群で、GFAP陽性のastrocyteの増加を認めた。今後、9カ月目に同様の検索を行い、高次機能障害の出現時期と、白質でのastrocyteの増加や、壊死の出現との関連を検討する予定である。
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