研究概要 |
ラットに放射線照射を施行することによって、“痴呆モデル"を作製し、解析を行ってきた。平成7,8年度は、照射方法及び照射量の関係を検討、生後6カ月のFischer344ラットの全脳に、A群:30Gy/1回照射、B群:5Gy×8回=40Gy分割照射/4週間、C群:Control、の照射を行い、その6カ月及び9カ月後に脳高次機能障害の有無をMorrisの水迷路、受動的回避学習の2つの課題を用いて検討し、組織学的検索を行った。結果、ABC各群共、照射後6カ月では脳高次機能障害が認められず、9カ月後ではA群で有意にB群でも少数ながら、脳高次機能障害が認められた。組織学的検索では。AB分共、6カ月後では壊死を認めず、9カ月後ではA群に壊死を認めた。平成9年度は、ABC群の他に、D群:25Gy/1回照射を加え12カ月後の検討を同様に行った。脳高次機能障害ではABD群共有無に障害が認められA〉D〉Bの順に障害の程度に差を認めた。組織学的には、壊死はA群で大多数に認め、海馬采、内包、脳梁が主体であった。B群でも約60%に壊死を認め、主に脳梁及びそれに近接する白質が殆どであった。C群では、壊死の出現は殆どなかった。しかしABCいずれの群も、壊死の認められた白質部は、壊死の有無にかかわらず、GFAP陽性のastrocyteの増加が認められた。この変化はいわゆる白質障害型痴呆の多発性硬化症やピンスワンガー症候群のそれに類似すると思われた。また、白質障害と壊死やアポトーシスの関連を検討する目的で、生後7日目のFischer344ラットの右半球にのみ照射を加えた。平成7,8年度は15Gyの照射で、ApopTagを用いて、平成9年度は、5Gy、10Gyの照射モデルも加えて検討したが、5,10及び15Gyいずれのモデルでも、照射後6時間から照射側白質において陽性細胞が多数認められ、照射1日後が最も著明で、4日後には認められなくなった。その程度は、どのモデルも同程度であり、もっと低い照射量でもOligodendrogliaは障害をうけるであろうと推察された。
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