研究概要 |
低酸素状態で飼育した砂ネズミに前脳虚血を作製し、慢性低酸素状態の脳虚血に対する影響を観察した。 【方法】砂ネズミ(雄、体重50-60g)40匹を用いた。20匹を10%の低酸素濃度で3週間飼育し、他の20匹は正常酸素濃度で3週間飼育した。以後の手技は正常酸素濃度下で行った。3週間の飼育前後で、両群の砂ネズミの体重測定を行った。両群5匹ずつは脳虚血前に4%パラフォルムアルデヒドを左心室より注入し、脳の潅流固定を行い、それぞれコントロールとした。他の30匹は両側総頸動脈を5分間閉塞し、前脳虚血を作製した。再潅流後2日、4日、7日に両群それぞれ5匹ずつを潅流固定した。潅流固定時へマトクリットを測定し、固定後心の左室+中隔と右室重量を測定した。脳を摘出し、海馬を含む冠状断面のパラフィン切片を作製し、組織学的に検索した。また、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF),血管内皮成長因子(VEGF)に対する抗体を用いて免疫組織化学染色も行った。 【結果】1)低酸素群砂ネズミの体重は3週間で55.9g±0.7から52.2g±1.2に変化し、正常酸素群は55.8g±0.7から69.4g±0.9に増加した。2)低酸素群にはヘマトクリットの上昇と右心肥大が観察された。3)虚血による海馬CA1の垂体細胞障害は低酸素群がより著しかった。4)低酸素群では脳虚血前にもVEGF抗原の発現が見られたが、正常酸素群では見られなかった。5)再潅流後2日,4日では両群ともにbFGF,VEGF陽性となったのが、7日では両者は陰性となった。 【結論】低酸素負荷によりbFGF,VEGFの発現が著明になったが、海馬の神経細胞障害は正常酸素群より強かった。
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