研究概要 |
我々は正常酸素濃度状態で脳に虚血負荷を与えて発現する遺伝子の検索、同定を目的とする分子生物学的アプローチを試みた。【方法】正常酸素濃度状態で飼育された砂ネズミ(雄、体重50-60g)の両側総頚動脈をフローセン麻酔下で5分間遮断し前脳虚血を作成した。コントロール、再潅流6時間後と2日後の3群に分け、素早く脳を摘出し、海馬の一部を液体窒素で凍結した。Differential display法により、海馬組織から抽出したRNA中のmRNA分子種の変動を検出した。oligo(dT)_<12>MN(M=A,G,C;N=A,G,C,T)をプライマーとして逆転写反応(RT)を行い、合成された相補的DNA(cDNA)を鋳型として適当な配列をもった合成オリゴ(N_<10>)と前述のプライマーとα-^<35>S-dATP、Taq polymeraseにてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。ラベルされたPCR産物を変性シークエンスゲルにて泳動しオートラジオグラフィーを行った。【結果】1.プライマーによって選択的に増幅されたcDNAがバンドとして塩基数別にdisplayされた。2.cDNAは(a)虚血によって減少し消失するもの、(b)虚血によって減少しその後回復するもの、(c)虚血によって新たに発現するものに分けられた。3.各バンドからcDNAを回収し、サブクローニング後塩基配列を決定した。【結論】cDNAのシークエンス情報を基に各cDNAの遺伝情報を解明することができればDifferential displayは虚血に対する脳保護機構の研究手段として大変有用と考える。
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