脳動脈瘤閉塞用の膜付きステントの開発を行っている。方法;2種類のステントを作製した。1.metal mesh stent (Strecker type)にpolyurethane(PU)の膜を張ったballoon expadable stent。2.高分子のfilmを巻いて筒状にしたself expandable stent。高分子材料としてpolyethylene tereftarate(PET)のfilmとpolypropylene(PP)のfilmを使用した。polyurethaneで作製したin vitroの動脈瘤のモデルをもちいて、ステントによる動脈瘤の閉塞可能性について、動脈瘤内のNaCl クリアランスを計測することで評価した。電導度の時間変化を測定し動脈瘤内のNaClクリアランスとした。動脈瘤のネックの部分にPU coated stent、PET film stentを挿入し留置状態を経時的にカメラで観察し、電導度の変化を測定し比較した。コントロールとしてステントを留置しない場合と金属ステントのみを留置した場合をとった。結果;NaClクリアランス;伝導度の減少はすべてy=eの曲線を描いた。伝導度の初期値の100/eになる時間をクリアランス時間として比較した。ステント無しおよび金属ステントコントロールとPU coated stentおよびPET film stentはともに統計学的に有意差が認められた。ステント無しおよび金属ステントコントロールとPU coated stentおよびPET film stentは色素の動脈瘤への流入も視覚的に差を認めた。新しい液体塞栓材料として接着性のないシアノアクリレート(ISCA)を作成し以下の点について実験的検討を行った。NBCA単体、NBCAとLipiodolの等量混合物、NBCAとISCAの等量混合物、ISCA単体、ISCAとLipiodolの等量混合物、NBCAとISCAの等量混合物にその同量Lipiodolを混合したもの6種類の液体塞栓物質を用意した。 1)硬化時間の評価;NBCA単体では0.1秒以下と非常に短時間で白くなるのに対し、ISCAでは10秒程度の時間を要した。従来のシアノアクリレートに比べ、重合時間が5〜10倍に長くなることが分かる。NBCAとISCAとを等量混合したものではほぼNBCAと同じ時間で重合した。従ってこの混合比を適宜調節することにより、至適な硬化時間を得ることが出来た。 2)接着力;また、カテーテルと頚動脈を用いた実験ではNBCA単体での接着力は135kgfとなったが、ISCA単体では接着力は測定出来ない程低かった。また日本白色種家兎の実験でもカテーテル操作に特別の注意を払っていないにも拘わらず、カテーテルがISCAの混合物により血管に接着する事はなかった。 3)粘度;NBCAが3.162cPであるのに対して、ISCAは7.420cPと有意に粘性が高く、実用上に支障を来す可能性が心配されたが、後述するように家兎腎動脈へのマイクロカテーテルに拠る注入に際し何等抵抗無く、臨床応用上の問題は無い範囲と考えられた。
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