研究概要 |
我々は、もやもや病の血管撮影の検討により、もやもや病では外頸動脈系にも狭窄病変が存在することを明らかにし、内頸動脈の内膜を肥厚させるのと同様の分子的メカニズムが外頸動脈系にも存在する可能性を示唆している(M Hoshimaru, et al,Neurosurgery 31:398-400,1992)。そこで、本研究では、浅側頭動脈から培養した中膜平滑筋細胞の不死化をおこない、大量に培養して研究材料を得た後に、分子生物学的な解析をおこなう。不死化に用いたretrovirusは研究分担者の賓子丸が開発したLINXv-mycであり、本retrovirusは、通常の状態ではv-mycが発現し、低濃度のテトラサイクリンを添加するとv-mycの発現が抑制されるものである(M Hoshimaru, et al,Proc Natl Acad Sci USA 94:1518-1523,1996)。3例のもやもや病患者(小児2例、成人1例)および3例の動脈硬化性脳血管閉塞症の患者より、STA-MCA吻合術時に、小量のSTA断端を採取し、外植片法により初期培養をおこなった。SmGM(MCDB131with 10ng/ml EGF,2ng/ml bFGF,0.39ug/ml dexamethasone,5%FBS)を培地として用いた。初期培養細胞に対して、LINXv-myc retrovirusを感染させ、200μg/mlG418にて選択すると多数のコロニーの出現をみた。出現したコロニーをまとめて継代培養した。G418に耐性の細胞に対して、anti-α-smooth muscle actinにより免疫染色を行なうと、すべての細胞が陽性で、中膜平滑筋細胞と考えられた。つぎに培養液中にlug/ml tetracyclineを添加すると、細胞の形態が、より紡錘形に変化した。継代を重ねると、現在のところ、もやもや病から得られた1細胞株が25継代目であり、不死化されたと考えられている。他の細胞株は約15継代目で増殖を停止した。尚、もやもや病と動脈硬化性脳血管閉塞症の間では明らかな形態的な差は認めていない。今後これらの細胞株からRNAを抽出しbFGF等の発現の差を検討していく予定である。
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