研究概要 |
本研究は、ラット脳12-リポキシゲナーゼに対する抗体を用い、虚血脳における同酵素ならびにその産生物の役割を明かにすることであった。抗体を作るにあたり用いた蛋白がグルタチオン-S-トランスフェレイスとのフュージョンプロテインであったためか、エウスタンブロットにおいて単一なバンドにならず使用することができなかった。したがって、再度抗体を精製することとともに、同産生物の脳組織ならびに細胞への取り込みと細胞障害を検討した。^<14>Cでラベルしたアラキドン酸より、12-リポキシゲナーゼを用い、12-HPETE,12-HETEを精製した。12-HPETEを犬の大槽に注入し、脳組織と血液のラディオアクティビティーを経時的に測定した。注入したほとんどの12-HPETEは数時間のうちに脳に取り込まれたが、血液への移行も速く、5日後では注入した量の1%が脳に残存した。しかし、20日後でもほとんど同じ量が残っており興味深い。次に、血管内皮細胞を用い培養し、アラキドン酸、12-HPETE,12-HETEの細胞への取り込みを比較した。アラキドン酸は加えた量の90%が5-6時間で取り込まれ、その後少量が放出された。12-HPETE,12-HETEの取り込みは、速度、総量ともアラキドン酸の約半分であった。以上の結果は、10^<-8>から10^<-5>Mまで濃度依存性であった。血管内皮細胞は強いためか、10^<-5>Mの12-HPETEでさえ細胞障害は認められなかった。ようやく抗体が使えるようになったので、現在、ラット脳虚血のモデルを作製し検討している。
|