我々は液体塞栓物質である酢酸セルロースポリマー(CAP)を開発し、血管内手術手技を用いて、脳動脈瘤の塞栓術を施行している.本年度は、近年、塞栓物質として臨床応用が進んでいる離脱式コイルと酢酸セルロースポリマーを併用して脳動脈瘤の塞栓術を施行し、その効果を検討した.実験は犬の頸動静脈を吻合して作成した実験的動脈瘤を用いた.経皮的血管内手術的に、まず離脱式コイルを動脈瘤内の特に瘤の頸部に近い部分を中心に留置し、次いで酢酸セルロースポリマーを注入して塞栓した.透視下に酢酸セルロースポリマーは動脈瘤内に離脱式コイルの隙間を充填しながら注入され、採取した組織切片でも離脱式コイルと酢酸セルロースポリマーが一塊となっているのが確認された.また、離脱式コイルが酢酸セルロースポリマーの親血管への迷入を防ぐ効果を示し、酢酸セルロースポリマーを注入する際の親動脈の血流コントロールの程度を軽減できた.術後の長期の経過観察では、離脱式コイル単独で塞栓した場合にみられる離脱式コイルの圧縮現象が、酢酸セルロースポリマーと離脱式コイルの複合体では認められなかった.これらの結果より、両者の併用により安全に動脈瘤を塞栓できる可能性を示唆した. また、実験的動脈瘤を酢酸セルロースポリマーで意図的に部分的に塞栓し、塞栓されなかった動脈瘤内腔の形状によるその後の臨床経過を検討し、動脈瘤の増大をきたしにくい形態ときたしやすい形態に分類した.
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