研究概要 |
in vivo状態におけるNO測定は、NOが極めて短い寿命の気体であること、ヘモグロビンにより捕捉されることから困難であることは言うまでもない。本年度に実施した内容は、使用電極が実際にNOを選択的に測定しうるか否かをin vitroで確認し、NO濃度依存性の標準曲線を描き…1)、この結果を用いて正常脳においてどのように検知されるか…2)を検討した。 我々の用いた電極(インターメヂカル社製)は、reference electrodeとworking electrodeの間に一定の電圧をかける事により、検知できる一酸化窒素(NO)の量に相関して増加する電流を測定し、NOに換算する方法である。SIN-1,SNP,SNAPを用いてin vitro条件下では、各々の濃度に対して指数関数的に電流を感知することがわかった。しかも、ヘモグロビンの存在下で感知できなかった。一方では、カルシウム、ナトリウム、酸素、水素により影響されなかった。しかしながら、これをもってin vivoで得られた値からNOの濃度を正確に評価することが困難なことから、NOガスにより電極のcalibrationをおこなった。電極毎に感度が異なり、in vivoでの実験に際してはその都度NOガスにより電極のcalibrationを繰り返した。NOガスにより電極のcalibrationからは、濃度と電流の間には、直接関係がえられ、しかもpH:6.8-7.4(虚血によりacidosisに傾く)では同等にNOを検知することができた。Malinskiらは、脳虚血作成直後より虚血部位の一酸化窒素の発生量は2-3μMまでに増加し2時間後にはbaselineに戻ると報告している。著者は、ラット中大脳動脈閉塞モデルを使用し、前述した電極にてNO濃度を、さらには、酸素濃度、脳血流(ドップラー)を測定した。時間的経過は、虚血早期のNO生成に関してはMalinskiら結果に類似したが、もっと大切な点は、脳微小血管におけるiNOS活性に相当した時間帯で(MCAO後4時間)NOの再度の発生を認めた事である。更には、LNAの投与によりこれら2つのピークを有意に抑えた点が注目すべき点である。このことは、LNAが明かに脳内のNOSを抑制していることを示すものであると同時に、LNAによる脳皮質のspecific gravityの低下抑制は、虚血後の脳浮腫にNOが深く関与することを示すことにほかならない。次年度は、再灌流モデルにおける結果を示す予定である。
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