研究課題/領域番号 |
07457324
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
阿部 周一 北海道大学, 理学部, 助教授 (80125278)
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研究分担者 |
野島 孝之 金沢医学大学, 病理部, 教授 (50142732)
吉田 廸弘 北海道大学, 理学部, 教授 (60001765)
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キーワード | 骨軟部悪性腫瘍 / 特異的染色体転座 / 遺伝子再配列 / RT-PCR / キメラ遺伝子cDNA / アンチセンスDNA |
研究概要 |
特異的染色体転座を保持した症例を含むユ-イング肉腫、滑膜肉腫、横紋筋肉腫などの骨軟部悪性腫瘍において研究を進め、今年度は以下の結果を得た。 1.ユ-イング肉腫t(11;22)転座によるEWS-FLI1キメラmRNAのRT-PCRを用いた発現解析から、通常サイズの産物を含む複数の転写産物が調べた13例中4例に認められた。cDNA構造解析から、変異転写産物はエクソン9の欠落を含むEWS遺伝子mRNAのスプライシング異常によることが分かった。サイズの大きなcDNA産物ではイントロンの挿入やエクソンの重複などが示唆された。エクソンの欠落がある変異産物は、融合により読み枠がずれてFLI1遺伝子側に終止コドンができており、C末端のDNA結合ドメインを欠く非機能的タンパクに翻訳されるものと推測された。 2.軟部悪性黒色腫t(12;22)転座によるEWS-ATF-1キメラcDNAの構造解析から、調べた3例中1例で、EWSエクソン8の欠失の外、従来の報告には無いATF-1エクソン9の欠失が認められた。これらの変化は、キメラタンパクのDNA結合ドメインなどの外にあるためキメラタンパクの機能には影響しないと考えられた。 3.キメラ遺伝子の複数転写産物は、滑膜肉腫t(X;18)転座によるSYT-SSXにおいても認められ、興味深いことに調べた9例全てに生じていることが分かった。得られた3種類のキメラ転写産物のうちサイズの大きい2つは、SYTへの塩基の挿入によることが分かった。 4.SYT-SSXキメラcDNA結合部位を含む複数のアンチセンスオリゴDNAを作製し、t(X;18)転座保有培養株2例に処理したところ、0.5〜10μMの範囲で濃度依存的に細胞増殖ならびにキメラmRNA発現の抑制が認められた。この結果は、SYT-SSXキメラ遺伝子が滑膜肉腫の発生に直接関与することを強く示唆している。
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