当該年度においては、長期血流負荷が組織再生過程における皮膚微小循環の血管構築に及ぼす影響をウサギ耳介透明窓法(rabbit ear chamber:REC)を利用して検討した。 血管拡張薬を慢性的に投与し皮膚血流を増加させた動物の耳介透明窓内に新生される微小血管を経時的に生体顕微鏡TVシステムを用いて観察記録し、コンピューター画像解析により血管組織が占める相対面積(covered area:CA%)と平均血管密度(mean vascular density: MDmm^2/mm^2)を計測し、総血管床面積(total vascular area:TA mm^2)を算出した。血流負荷によりこれらの値が増大することが示され、血管新生が亢進することが定量的に明らかとなった。TAは新生した微小循環の血管径と血管数を同時に反映し、包括的に血管構築を表現するパラメーターであると考えられる。すなわちTAの増大は微小血管の径および数の増加を意味する。流体力学の数式から径および数の増加は血管内皮細胞の受ける流れずり応力(壁ずり応力)の減少をもたらすことが導かれる。そこで血流の負荷により血管新生が亢進するメカニズムを考えると血流の増加によりずり応力が上昇し、それを血管内皮細胞が検知して血管新生を亢進させることで、ずり応力を生理的一定値に保とうとするフィードバック機構が想定される。 これらの結果は血流に起因する血行力学的情報特に流れずり応力に対して生体が適応して血管構築のリモデリングによる制御機構の存在を示唆するものである。
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