当教室において、両側性網膜芽細胞腫に続発した骨肉腫例、いわゆるsecond primary osteosarcomaの症例を経験し、腫瘍摘出時に正常線維芽細胞株並びに骨肉腫細胞株(OSrb/N‐M)を樹立することができた。second primary osteosarcoma例の細胞株は世界的にみても2例目と極めて貴重なものと考えられ、この細胞株のcharacterizationを行っている。Rb遺伝子変異については、サザンブロット解析及びPCR‐RFLPにて、異常な側の(first hitを受けた)Rb遺伝子の重複並びに正常側のRb遺伝子の喪失、もしくは遺伝子転換、即ち、腫瘍細胞ではfirst hitを受けたRb遺伝子のisodisomyが起こり、結果としてRb遺伝子の不活化そして発癌が起こったものと解釈された。また、初代凍結保存細胞をin vitroで培養後、limited dilution法にて複数のクローンを得て、PCRによる結果がそれぞれのクローンで再現されており、全てのクローンで同じ変異が起こっていることを明らかとした。同一患者のパラフィン包埋網膜芽細胞腫標本よりDNAを抽出し、これを鋳型とする同様なPCRによる分析の結果、骨肉腫細胞と異なるLOHが起こっており、網膜芽細胞では変異Rb遺伝子内に更に点突然変異が加わり、その後、この領域を含むRb遺伝子の一部で分裂組換えが起こったものと考えられた。即ち、これら二つの腫瘍の発癌過程では、Rb遺伝子に異なったsecond hitが加わったことを示唆する結果を同一患者で初めて得ることができ、研究発表を行った。 Rb遺伝子とともに癌抑制遺伝子として知られるp53遺伝子について、蛋白発現を調べるためWestern blottingを行ったところ、OSrb/N‐Mのp53に過剰発現がみられた。蛋白の過剰発現がみられる場合、point mutationの存在することが多くあることより、p53遺伝子において、point mutationの多発することが知られているexon4〜9についてPCR‐SSCPを行ったところ、OSrb/N‐Mのexon8に異常バンドを検出した。そこで、この領域のsequecingを行ったところ、codon281のGACがTACとなるpoint mutationを発見した。今後は、更にサザンブロット、ノーザンブロットによる検討を加える予定である。
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