研究概要 |
試作したシミュレータにブタの膝関節を取り付け,関節に各種の外力を加えたときの半月板に変位を計測した.その結果,膝の屈曲伸展運動に対しては半月板は数ミリメートル変位して十分な可動域を確保させる事ができることがわかった.一方,半月板は横断面の径方向にはほとんど変位しないので,長軸方向の関節荷重の大部分が半月板を介して軟骨の広い部分に伝達されることを確認した.また,荷重によって外側半月板が前方に移動するため,大腿骨に対して脛骨が外旋することを確認した.さらに内外側方力,前後方向力,回旋モーメントが加わるときには半月板は靭帯と共同して膝の動きを制御して安定した運動を可能にすることを明らかにした.計測により,内側半月板がほとんど変位しないのに対して外側半月板は前後方向に容易に動くことがわかった.半月板のこの特性が膝関節における可動域と安定性の両立に貢献していると考察された. 衝撃荷重下での応力波の伝達機構に関して計算機シミュレーションを試みた.半月板はヤング率が低いため,静荷重下では比較的変形しやすい一方で,衝撃荷重下のような高速現象においては変形量が少ないことにより応用波を伝達する結果を得た.海綿骨内部に応力センサーを埋埴して衝撃下における応力波を測定して上記の計算による見積りが正しいことを確認した.また静荷重下では応力は関節の中心部を通過して海綿骨から海綿骨へ伝えられるのに対して,衝撃荷重下では応力波は関節の周囲部を通過して皮質骨へ伝達されることがわかった. 以上の結果より,人工半月板に生体半月板と同様の機能を持たせるためには,断面を楔状にして,外方への変位を制限する一方で,外側半月板の前後方向への可動性を付与する必要があることが明らかになった.
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