1.10日齢の家兎から後肢の長管骨を無菌的に摘出し、これを培養液中で細砕、震騰することによって破骨細胞を含む全骨細胞の浮遊した上清を回収した。これをコラーゲンゲル上で4時間培養し、蛋白分解酵素およびコラゲナーゼで処理することによって哺乳類の破骨細胞を比較的高濃度に得ることができた。 2.擬似体液への浸漬期間または、その濃度を変化させることによってカルシウム、リン比などの異なる様々な骨類似の構造を有するアパタイトを自在に、厚みを変化させて様々な基盤上に作成することが可能となった。また、擬似体液中にビスフォスフォネートを添加することで骨類似アパタイトの形成が抑制されることがわかった。 3.様々な厚みを有する骨類似アパタイトをプラスチック基盤上に作成し1.の方法により採取した破骨細胞を高濃度に有する全骨細胞をこの上で培養した。位相差顕微鏡および走査電子顕微鏡を用いて破骨細胞および吸収かを観察したところ1.5μmの厚みを有する骨類似アパタイトを用いた場合に最も有効に破骨細胞の観察およびそのアパタイト吸収量の測定が可能なことが判明した。 4.骨には破骨細胞の接着または活性に影響を及ぼす蛋白が含まれているが、擬似体液中で作成した骨類似アパタイトには有機物は含まれていない。このため、鯨から採取したデンチンと骨類似アパタイト上で破骨細胞を培養しその吸収活性を比較検討した。骨類似アパタイトの吸収面積はデンチンの約70%であり2群間に有意差はなかった。 5.活動中の破骨細胞を位相差顕微鏡で観察した報告は初めてである。これにより1.の方法で得られた破骨細胞は間葉系細胞と接触していなくても吸収活性を有する可能性が示唆された。また、ビスフォスフォネートを吸着した骨類似アパタイト上では破骨細胞による骨吸収が抑制されるのが観察された。 6.骨、デンチン等の自然の材料は個々の質にばらつきがあり、破骨細胞の吸収活性に及ぼす影響も無視できない。擬似体液による骨類似アパタイトでは均一な材料が得られるために個々の実験間の比較も容易である。また、プラスチックなどあらゆる材料の上に作成可能であるため破骨細胞の観察にも有利である。
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