研究概要 |
ヒト軟骨肉腫初代培養細胞を5〜10MPaの静水圧をかけた培養条件にて24時間まで培養し、培養軟骨細胞の基質接着構造、アクチン細胞骨格の変化、さらにはimmediate early geneであるc-fos,c-junの発現変化を経時的に検討した。その結果、培養軟骨細胞に対する持続的な静水圧の負荷は数時間にて細胞接着部位を縮小させ、同時にアクチン細胞骨格の脱重合を促進させることが明かとなった。さらにこの変化は細胞内へのc-fos,c-jun遺伝子産物発現と時期的に符合していることが判明し、これらimmediate early geneによる転写制御が力学的環境の変化に対する細胞応答に関与していることが示唆された。 immediate early geneによる転写制御が力学的環境の変化に対する細胞応答に関与していることが強く示唆されたことにより、今後力学ストレスに対する細部応答を司る鍵となる分子のスクリーニングの方向づけが出来上がったことの意義は大きいと考えられる。 これら細胞接着構造、アクチン細胞骨格の変化はチロシンキナーゼ阻害剤であるgenistein,tyrphostinの添加により阻害された。さらにCキナーゼ阻害剤staurosporinも同様に阻害効果を示したためにこれらの細胞応答にはチロシンキナーゼ及びCキナーゼの両シグナル伝達機構が関与することが示唆された。 各種シグナル伝達機構の特異的アゴニスト、阻害剤の使用により、ある特定の細胞応答に関与するシグナルの絞り込みが可能となった意味も大きく、今後さらにはシグナルの上流から下流にいたるカスケードの全容の解明の一端に寄与したい。
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